2022.11.10
ココナッツから作られた食品や化粧品などを見かける機会が最近増えてきました。
その中で健康や美容によいと特に注目されているのが「ココナッツオイル」ですが、日本ではその使い方が十分に知られていないのが実情です。
そこで今回は、フィリピン産ココナッツ商品のパイオニア的存在である、株式会社ココウェル・代表の水井さんに、ココナッツオイルの活用法やおすすめココナッツ商品、ビジネスにかける想いなどについて、Good Good Mart店長の播(はり)がインタビューしました!
株式会社ココウェル代表取締役
水井裕(みずいゆう)
途上国の環境問題を学ぶためフィリピンの大学へ留学。授業の一環で訪ねたゴミ山で、その劣悪な環境の中で鉄くずやプラスチックを拾って生活する子供たちを目の当たりにして、環境問題だけではなく貧困問題の深刻な状況に大きな衝撃を受ける。フィリピンに多く生育するココナッツの価値を高めることで農村部に産業を創り、農家の人々の安定した生活に少しでも貢献できるのではないかとの想いから、2004年株式会社ココウェルを設立。
Good Good Mart店長
播太樹
Good Good Martを運営する株式会社フレンバシー代表。1987年生まれ、大阪出身。プラントベースの食べ物が大好き。でもパクチーはちょっと苦手。
まずは、水井さんからGood Good Martをご利用の皆さんへのメッセージをお届けします!
今回ご紹介する商品
色々使える調理油!メリットたっぷりの「ココナッツオイル」
ココウェルの有機ココナッツオイル商品
食べものからコスメまで、御社のココナッツ商品をGood Good Martでは数多く取り扱わせていただいています。その中で水井さんが特におすすめする商品はありますか?
そうですね。お客様から特に人気なのは食用の『有機プレミアムココナッツオイル』です。
『有機プレミアムココナッツオイル』はどんな料理に向いているのですか?
ココナッツ独特の甘い香りもないので、炒めもの、揚げものをはじめ、ご家庭でご使用中のオイルと同じように和・洋・中、エスニックなど、どんなジャンルの料理にも手軽に使えます。
香りこそありませんが、オイルのうま味がしっかりあって様々な料理の味わいが引き立ちます。
特に揚げもの料理に関しては「油の温度が低めでもカラリと仕上がるし、油切れがよくてべたつかない。我が家の揚げものは失敗知らずです!」といった感想をたくさんいただいているんですよ。
揚げものの調理に苦手意識のある方はぜひ!旬の野菜を「有機プレミアムココナッツオイル」で揚げてヘルシーなベジタブルチップスに
確かに、ココナッツならではのあの甘い香りが全くしませんよね。
天然石灰と活性炭というふたつの天然素材でろ過・精製を行って香りを取り除いてあります。ココナッツ独特の香りが苦手な方も美味しく召し上がっていただけるはずです。
また、ココナッツオイルは25℃以上で液体に、20℃以下で固体に変わる性質がありますので、バターやマーガリンの代わりにも使え、プラントベースの食生活をしている方にも好評ですよ。
冬場に固まったココナッツオイルの様子
美容や健康によいと最近認知度が高まっているココナッツオイルですが、他の食用オイルとは違った特長はありますか?
やはり一番は、熱に強い、酸化しにくいというところです。ココナッツオイルで作ると、食べ物が劣化しにくくなり、お菓子などの加工品は美味しさが長持ちします。
また、酸化した食品は病気や老化の原因になるとよく言われますが、そのリスクを減らすことも期待できるかと思います。
それはウレシイですね! 栄養成分的にはどんな特長があるのでしょうか?
ココナッツオイルが酸化しにくいのは、植物油には珍しく、成分全体の90パーセント以上を「飽和脂肪酸」が占めているからです。
さらに、その「飽和脂肪酸」の60パーセント以上が「中鎖脂肪酸」(MCT)です。この「中鎖脂肪酸」はエネルギーとして燃焼される効率がよく、中性脂肪になりにくいため、ダイエット効果が期待できるといわれています。
他にも、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクがあるといわれるトランス脂肪酸を含まず、逆に、抗菌・抗炎症作用の期待できるラウリン酸を含有しています。
人間の細胞を取り囲んでいる細胞膜の主成分は油なので、菌やウイルスによる攻撃を受けにくい丈夫な細胞膜を作ることができるとされています。
あらゆる面でパーフェクトな調理用オイルといっても過言ではないと思います。
年齢を問わず安心して使える優れモノコスメも
色なしタイプのリップクリーム「ココリップ」は、プレーン(写真)、ココナッツ、サンパギーダの3種類
なるほど、美容や健康への関心が高い方にココナッツオイルが支持される理由はそこにあったんですね。食品以外には、どんなおすすめ商品がありますか?
ココナッツを使ったコスメも色々ありますが、最近リニューアルしたばかりのリップクリームはおすすめ商品のひとつです。
ココナッツオイルをベースに、キャンデリラ草という植物から作られた「キャンデリラロウ」、カルナウバヤシというヤシの木からとった「カルナウバロウ」、「ココアバター」などを使った植物性のリップクリームです。
どのような点が新しくなったのでしょうか?
従来品には入っていたミツロウを使わないヴィーガンコスメを作りたいと新たに開発しました。ミツロウ不使用ということで硬さの調整にはかなり苦労しましたが、試作を何度も繰り返して納得のいく仕上がりに出来ました。
香りつきのものは天然香料(精油)を使い、色つきのものは天然鉱石で色を出した、本物のオーガニック・ナチュラルコスメの自信作ですので、ぜひ試していただきたいですね。
色つきタイプのリップクリーム「ココカラーリップ」は、ローズピンク(写真)、ルビーレッドの2種類
「ココナッツオイルの効果でしっとり感が続くから塗り直す頻度が減った」「この成分なら子供にも安心して使えますね」「パッケージがかわいい!」とお客様からも好評です。
ココナッツとの出会いは留学先のフィリピンで
現在46歳のココウェル・代表、水井さん。「留学先のフィリピンで人生と価値観が大きく変わった」と話す
食品、加工品、コスメ、お酒など、御社のココナッツ商品のラインナップは本当に幅広いですよね。
ココナッツを原料に作られた商品を専門的に取り扱う日本企業として御社はパイオニア的存在ですが、代表の水井さん自身はココナッツといつ、どんな風に出会ったのですか?
ココナッツに初めて出会ったのは、大学卒業後、環境の専門学校に通っていた時代に、フィリピンに短期留学した時でした。
環境の専門学校というものがあるんですね! 水井さんが環境に興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか?
英語を専攻する大学生だった頃、ちょうど地球環境問題が深刻化しつつあって、1997年には温室効果ガスの削減目標について各国が話し合う国際会議「京都会議(COP3)」が日本で開かれました。
そして大学の授業の一環で、「模擬京都会議」と題したディベートを開催することになり、学生一人ひとりに各国の首脳の役割が割り振られた中、僕はたまたまフィリピンの大統領役になりました。
そのディベートの準備でフィリピンについて勉強を始めたところ、フィリピンを始めとする開発途上国が抱えている環境問題について知り、興味がとても湧いて、「将来は環境(問題)に関わる仕事がしたい!」と考えるまでになったんです。
へぇ、そんなことがあったんですね。
はい。元々ボーイスカウトの活動をやっていて小さな頃から自然に触れる機会が多かったことも影響しているかもしれません。
「仕事にするなら、改めてしっかりと環境について学び直そう」と考えたのですが、当時、大学に環境系の学部は全くなく、専門学校に通うことにしました。
そして「せっかく学ぶなら、途上国が抱える環境問題の現場を実際に自分の目で見てみたい」とフィリピンに3か月間の短期留学をしたんです。
フィリピンで現地の子供たちと交流する水井さん
留学先ではどんな勉強をしたのですか?
現地の大学で「環境科学」を学びました。そして最初に視察に連れていかれたのが、フィリピンの環境問題で一番深刻だったごみ問題の現場である、首都・マニラの北方に位置するスラム街「スモーキーマウンテン」でした。
ここは焼却されないゴミの投棄が1950年代から始まり、以来マニラ市内から出たごみが大量に運び込まれるようになった場所です。
やがて、そうして出来たゴミ山の中から廃品回収を行って日銭を稼ぐ貧しい人々が住み着き、急速にスラム化しました。
「スモーキーマウンテン」の名前の通り、自然発火したごみからの煙があちこちで上がり、目も開けていられない、臭いもきつい、そういう劣悪な環境で人々が暮らし、幼い子供たちが本当に薄っぺらいサンダル一枚でゴミ山に登っていっては鉄くずなどを集めていました。
それは衝撃的な光景ですね。
はい。話に聞いてはいましたが、想像以上に深刻な貧困の現状を目の当たりにし、大きなショックを受けました。
そして、環境問題よりも、この貧困問題に対して何かできることはないものかと調べていくと、そこの住民たちが家族一緒になって地方の農村地帯から移り住んできた人たちであることがわかったんです。
彼らはなぜわざわざそんな場所に移住してきたのですか?
フィリピンの地方の農村の暮らしは貧しく、仕事もないので、「マニラという都会に行けば、何か仕事が見つかるかもしれない、何かチャンスを得られるかもしれない」という夢を持って皆田舎から出てくるんです。
でも現実はそんなに簡単ではなく、結局仕事が見つからずに少しでもお金が稼げるゴミの山に集まってきてしまう、そんな構図が出来上がってしまっていました。
彼らがはかない夢を見て都会に出てこなくて済むようになるにはどうしたらよいのかと考えた時に、「もともと生まれ育った農村に仕事さえあれば理想的なのではないか」と思いました。
そして実際に農村に足を運んでみたところ、そこらじゅう、びっくりするくらいココナッツの樹だらけだったんです。
ココナッツをフィリピンの貧困問題解決のための糸口に
「事業を通じてよりよい社会を実現したい」との想いを同じくする者同士とあり、話が弾む水井さんと播
そのココナッツはもともと自生している天然のものなんですか?
野生のココナッツもありますが、大半は、かつてフィリピンがアメリカ領だった時代にアメリカが産業用の作物として戦略的に大量に植えたものです。
それを地元フィリピンの人たちにひらすら栽培させ、その実を安く買い取っては現地でココナッツオイルに加工してアメリカ本国に輸出するということを長くやっていたんです。
現地フィリピンのココナッツ(ココヤシ)林の様子。かつて人の手によって植えられたものだが、今ではすっかり自然の中に溶け込んでいる
その結果、現地の農家はただただ言われるままにココナッツの実を作らされて、それを外国企業に安く買いたたかれ続ける、そういう構造が出来上がってしまっていました。
それを知って、もし彼らが自分たちで加工まで出来るようになり、香り高く純度が高いエキストラバージンココナッツオイルや、ココナッツの花の蜜を丁寧に煮詰めて作られるココナッツシュガーなど、高付加価値の商品を自身で直接販売できるようになれば、収入が増えてもっと豊かになれるんじゃないか、農村から都会に出ていかずに済むんじゃないかと考えました。
そしてココナッツについて調べるほどに、他の作物と共生でき、栽培しても土地が痩せないので環境に優しいし、体にもよいし、現地フィリピンの農村の貧困問題も解決できるだろうし、これほど魅力的な作物はないと確信しました。
そんなフィリピンのココナッツから作られた商品を、自分が生まれ育った日本という市場で広めていきたいと強く願うようになっていったんです。
手売りで一歩ずつ進めていった、日本でのココナッツ商品販売
有機ココナッツオイルのみで作られた全身ケア用美容オイル「オーガニックバージンココナッツオイル」は、コスメでは珍しい日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会の有機認証を取得
それが今の会社を起業することへと繋がっていったのですね?
実は当初、起業したいという気持ちは全くなかったし、正直、考えたこともなかったんですよ。フィリピン産のココナッツ商品を取り扱っている会社があればそこに入りたいぐらいのつもりでした(笑)。
でも当時、そんな会社は日本には見つからず、じゃあ自分で作ろうと立ち上げたのが今から18年前の2004年です。
ココナッツオイルの輸入販売から始めたのですが、食用、化粧品用どちらも当時の日本では全く知られておらず、そんな中でも比較的売りやすかったのが化粧品用のココナッツオイルでした。
へぇ、食用ではなかったんですね。
未知のココナッツオイルを口に入れるのは抵抗がある人でも、一度試しに肌に付けてもらえればその心地よさや効果を実感できますし、香りがよく、魅力が伝わりやすかったのが化粧品用だったんです。
事業資金は十分ではなかったですし、営業も宣伝もなかなか難しい中、「ひとまずココナッツオイルを肌に付けてもらう機会を増やそう」と当時全盛だったフリーマーケットを中心に販売活動を始めました。
周りが古着を売っている中で小さなブースに段ボールを置いて、前を通る人に無理やりオイルを塗って試してもらい、気に入ったら小さな瓶入りを300円、400円で買っていただくところからのスタートでした。
「オーガニックバージンココナッツオイル」はフェイス、ボディ、ヘアなどに幅広く使え、マッサージオイルにもおすすめ。ココナッツシュガーと混ぜれば、自家製ココナッツシュガースクラブに
まさに露天商のような形での始まりだったんですね。
本当にその通りです(笑)。でもそんな地道な活動を続けていると、少しずつリピーターが増えていきました。ブティックや整骨院など、自分たちのお店で販売してくれる方も出始め、そういうことを繰り返して少しずつ広めてきたという感じです。
そして食用オイルに関しては、「美容や健康に良い」という海外からのニュースなどが後押しになり、少し遅れた2008年ころから売れ始め、2014年か2015年くらいには全国的なブームとなって今に至っています。
お陰様でこうしてフィリピンの多数のココナッツ農家さんと連携し、現地の提携工場の協力の元で出来上がったココナッツ商品が日本でも普及しつつあります。
起業のモチベーションであった「現地フィリピンの農村に雇用を生み出し、産業を育て、貧困問題を解決に導く」という目標はこれからも大切に守り、事業を続けていきたいと考えています。
ココナッツ商品を通じて、よりよい世界の未来を作る
モチモチとしたきめ細かな泡でしっとり洗いあがる「ココソープ」。全5種の中にはカモミールやローズマリーなどのハーブの香りをプラスしたものも
御社はココナッツ商品の製造・販売以外に様々な社会活動もされていますよね。フィリピンと日本を繋ぐという目標を掲げた「COCO FUND PROJECT」についても教えていただけますか?
「COCO FUND PROJECT」は、このプロジェクトのマークがついた弊社の商品を購入いただくと、その代金のうちの10円を、フィリピンと日本を繋ぐ社会貢献活動に利用させていただくというものです。
どのような活動に使われるのですか?
この活動には二つの柱があって、ひとつは「フィリピンのココナッツ農家の支援」、もうひとつは「不登校や引きこもり、経済的な困窮、発達障害などの問題を抱えている日本の高校生がフィリピンの貧困を知るスタディーツアー参加の実施」です。
前者では、新しいココナッツ苗や肥料となる塩の購⼊、災害復興などのための資金を農家に提供しています。
僕らの事業は第一にココナッツ農家の皆さんがいてくれるからこそ可能になるという考えのもと、農産物を適正な価格で買い取るだけではなく、さらに売り上げの一部も再度還元することで、農家の皆さんの暮らしを支えていく「フェアトレード・プレミアム」を実践するためのものです。
後者では、様々な事情から生きづらさを感じている日本の高校生に「海外渡航」という挑戦の場と、貧困の現状を知る機会を提供し、自分たちの未来を少しずつでも変えるきっかけにしてもらうというものです。
スタディーツアーに参加した方には、実際どのような変化があるのでしょうか?
2週間弱のツアーなんですが、価値観が大きく変わって帰ってくる子が本当に多いんです。
スラムや農村に暮らす現地の子供たちと触れ合うことで、「なんでこんなことで自分は悩んでたんだろう」と思ったり、貧しい中にも温かな家族愛があることを知り、本当に底抜けの明るさを持って懸命に生きている子供たちの姿に励まされて前を向きだすということがよくあります。
中にはツアーがきっかけでフィリピンがすっかり大好きになり、今現地の日本大使館で働いているとか、聴覚障害があって先生になりたいという夢を諦めかけていた子が「もう一回先生を目指します」と教職課程に進学したという例もあります。
それは、素晴らしいことですね。
やっぱり僕自身もフィリピンに行ったことがきっかけで会社を始めたように、フィリピンには何か不思議な力があって、なるべく多くの方にそんなフィリピンの姿を見て欲しいという思いで始めた活動です。
ココナッツの素晴らしさをさらに多くの人に伝えていきたい
2022年9月にココウェル本社1階にオープンしたばかりの「sari sari store(サリサリストア)」ではココナッツを使ったフードやドリンクテイクアウト販売やココナッツフードの量り売りを実施
会社の規模も大きくなり、商品のラインナップも増えてきた今、次のステップとしてどのような目標があるかを教えていただけますか?
20年近く活動を続けてきましたが、日本での市場を広げるということに対して現地からは大きな期待を寄せていただいています。
日本全体でのココナッツ商品の使用量をさらに増やすことが課題としてあり、もっと多くの方に手に取っていただくためにココナッツ加工品のラインナップをもっと増やしていきたいと考えています。
たとえば、どんな加工品を今後出していく予定なのですか?
ココナッツミルクやココナッツシュガーなど、すでに販売をしている素材を組み合わせることで本当にいろいろな加工品が作れます。
本社1階のテイクアウトが中心のショップ「sari sari store(サリサリストア)」の隣にラボ(工房)を作って、プラントベースのアイスクリーム、チーズケーキ、ユニークなところですと、MCTオイルを使った「食べるラー油」、ココナッツフラワー(ココナッツ粉)で作る「ふりかけ」も開発中なんですよ。
「ラー油」も「ふりかけ」もぜひ食べてみたいですね!御社のウェブサイトにも書かれている「フィリピンから貧困をなくしたい」「ココナッツでセカイを変える」という創業からの想いが今後どのような形となって展開されていくのか、本当に楽しみです。
本日は素晴らしいお話をありがとうございました!
こちらこそ、どうもありがとうございました!
最後にもう一度、小林さんからGood Good Martをご利用の皆さんへのメッセージをご覧ください!
cocowellの商品