2022.12.13
買い物をするときはパッケージに書いてある原材料名を見て、どこ産のものか確認してから購入するという方も多いでしょう。
たいていは国名が表示されていますが、もし産地の町名まで記されていたらいかがでしょうか?ふいに飛び込んできたローカルな地名に、思わず作り手の顔を想像される方もいらっしゃるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、島根県の奥出雲地方で、地元の米や野菜を使った農産加工品の製造販売を手がける「株式会社吉田ふるさと村」の堀江さん。
この記事では1985年の設立当初からブレない商品づくりへのこだわりと、人気商品の開発経緯やおすすめポイントをたっぷりご紹介します。
株式会社吉田ふるさと村 農産加工部 部長
堀江祐輔
奥出雲山間部過疎地域での地域振興に取り組む島根県雲南市の株式会社吉田ふるさと村の農産加工部長。入社以来、地元で栽培されたお米や野菜を原料に使用した農産加工品の販売業務を担当。ふるさとのぬくもりをあなたのもとへお届けします。
インタビュワー
赤錆菜々
長崎生まれ、北海道育ち。長野県在住のフリーライター。取材記事を中心に執筆。関心領域は人と自然と食。馬と山が好き。
まずは、堀江さんからGood Good Martをご利用の皆さんへのメッセージをお届けします!
今回ご紹介する商品
吉田ふるさと村で製造する意味と価値があるか
吉田ふるさと村さんの商品はどれも原材料がシンプルで、ラベルに表示されているもののほとんどが農作物の名前ですね。なかには原材料名の後ろに、産地の町名まで書かれている商品もあって驚きました。
農産加工品を製造する際に、私たちが決めていることがふたつあります。ひとつは、なるべく地元産の農産物を使うこと。もうひとつが、食品添加物を一切使わずに製造することです。
弊社は島根県雲南市吉田町(旧吉田村)という、古くから農業が盛んな地域にあります。せっかく良質なお米や野菜が採れる場所ですから、地元産の農産物をなにかしら使った商品でなければ、ここでやる意味や価値が小さくなってしまうと思うんです。
できるかぎり地元の農産物を使うことは、農家さんの安定した収入、ひいては町の発展にもつながります。吉田町産が難しければ雲南市産、それが難しければ島根県産、それも難しければ国産という考えで原材料を調達しています。
原材料名の後ろに産地の町名まで表示されている商品も
消費者としても、どこで作られた農産物か明記されているのは安心ですね。食品添加物を使わないことに対してはどんな思いがありますか?
1985年の設立当初から、食品添加物を一切使わないことを社の方針として掲げ、それに沿って商品を製造してきました。やっぱり食品に関わる以上、安心・安全なものを作りお届けしたいという想いが一番にあります。
弊社の製造工程は手作業が多く、大量生産は難しいのが現状です。その分、保存料や着色料といった添加物を使わずに、お子さんからご高齢の方まで安心して食べていただけるような商品を心がけています。
パッケージからも思わず手に取りたくなるような温もりを感じます。
『ノンオイルドレッシング(しょうが)』のパッケージデザイン
若い方にも手に取っていただきやすく、吉田町の地域性を伝えられるパッケージデザインにすることを意識しています。最終的にはデザイン会社に依頼をしていますが、どの商品も大本となるデザイン案は弊社で作成しています。
ブランド唐辛子「オロチの爪」で作る『一味・七味とうがらし』
島根県雲南市のブランド唐辛子「オロチの爪」を使用した『七味とうがらし』
御社の『七味とうがらし』を初めていただいたとき、香りのよさに驚きました!
ありがとうございます。弊社の『一味とうがらし』と『七味とうがらし』は、程よい辛みと香りのよさが特徴の商品です。料理の味を引き立たせる上品な辛さと豊かな風味を気に入られて、リピートされるお客さまも多くいらっしゃいます。
香りのよさの秘密はどこにあるのでしょうか?
「オロチの爪」というブランド唐辛子を使用しています。雲南地域で栽培されている代表的な農作物で、私の手と比べても……
代表的な唐辛子の品種「鷹の爪」の3倍ほどの大きさ
大きい!
そうなんです。だいたい15cmくらいでしょうか。見た目は大ぶりでインパクトがありますが、辛みはそこまで強くなく、爽やかな風味と香りをお楽しみいただけます。出雲地域に伝わるヤマタノオロチ伝説にちなんで、「オロチの爪」と名付けられました。
唐辛子は国内自給率が低く、100%国産の一味唐辛子はとても貴重です。なかでも弊社の『一味とうがらし』は、ここ雲南市吉田町の唐辛子だけで作っています。
肉厚で、ピリッとした辛みとマイルドな甘みやうまみを感じられるのが特徴
『七味とうがらし』は、唐辛子のほか6種類の吉田町産の野菜を使用しています。風味が強い柚子と山椒の量の調整には特に苦労しましたが、配合を何十回と繰り返し、完成に至りました。
7つの風味が調和し、香り豊かな七味に仕上がりましたので、辛いものが苦手な方もぜひ一度お試しいただければと思います。
一日に600キロを製造!設立当初から大人気の『杵つきもち』
長年のファンが多い『杵つき玄米もち』
『杵つき玄米もち』も大好きです。
会社設立時から製造している餅製品は、弊社の主力商品のひとつです。
このあたりは中国山地の山間部に位置し、標高が高く昼夜の寒暖差が大きいため、米作りに適した地域なんです。また、川の上流からきれいな水を田んぼに引くことができるのも、良質な米の栽培を可能にする重要な要素です。
寒暖差の大きい気候と清らかな水をエネルギーに育った良質なもち米から、粘りとコシが強い、おいしいお餅ができあがります。『杵つき玄米もち』は、もち米を玄米のまま使って製造しているので、香りや風味をよりお楽しみいただけます。
秋から冬にかけては、毎日600キロものお餅を製造しているんですよ。
毎日600キロ!それだけ楽しみにされている方が多いということですね。
ありがたいことに、たくさんのお客さまから「毎年買ってます」「10年間愛用しています」「こんなお餅は今まで食べたことがないってくらいおいしかった」といったうれしいお声をいただいています。
『杵つき玄米スープもち』は熱々のお味噌汁に入れるだけで柔くなり、汁物の食べ応えもアップするので、朝ご飯に重宝しています。
スープもちの開発は、まさにそこをイメージしてスタートしました。お餅離れが進む若い世代の方々にもお餅のおいしさを知ってもらいたいと考えたときに、「手軽に食べることができたら、普段の食事に取り入れてもらいやすいのでは」と、社内でスライスもちが候補に上がりました。
それこそ忙しい朝でも、「スープやお味噌汁に入れるとちゃんと主食になりますよ」との考えからはじまった商品なんです。
スープや味噌汁に入れると、腹持ちのいい主食に早変わり!
玄米のスライスもちは珍しい気がします。
そうですね。お客さまから「白米のスライスもちはスーパーでも見かけるが、玄米のスライスもちはなかなか手に入らないので作ってほしい」とご要望をいただいたことも、『杵つき玄米スープもち』を開発する後押しになりました。
弊社は食品添加物を使わない商品の製造販売を長年続けてきましたので、玄米食のお客さまが非常に多いといった背景もありますね。
『杵つき玄米スープもち』は、お客さまの声から生まれた商品だったんですね!
出雲地方はぜんざい発祥の地
やさしい甘さで人気の『16種類のプチプチ雑穀ぜんざい』
『16種類のプチプチ雑穀ぜんざい』についても教えていただけますか?
小豆ともち米は地元でふんだんに栽培されているため、それらを使った商品を作れないかということで、『16種類のプチプチ雑穀ぜんざい』が生まれました。
実は出雲地方はぜんざい発祥の地と言われているんです。全国から八百万の神様が出雲に集まる旧暦10月、出雲では古来から「神在祭」と言われる神事が執り行われてきました。
そこで神様にお供えしていたのが、小豆とお餅を使った「神在餅(じんざいもち)」です。これが訛って「ぜんざい」になったと古い書物にも記されているそうです。
それは知りませんでした!出雲のぜんざいを食べたくなります。
弊社のぜんざいも、甘さ控えめの味わいがお客さまから支持され、おかげさまで多くのご注文をいただける人気商品になりました。
16種類の国産雑穀が入っているため、ぷちぷちとした食感を楽しむことができます。
それから、一般的に流通しているレトルトタイプのぜんざいはお餅が入っていないものがほとんどだと思いますが、弊社はお餅入りです。
電子レンジで温めるだけで、もっちりとしたお餅と雑穀入りのぜんざいが楽しめる
そういえば、お餅入りのレトルトぜんざいはあまり見かけませんね。
レトルト加工で加熱する際、熱に耐えきれずにお餅が破裂してしまうため、レトルトぜんざいにはお餅が入っていないことが多いんです。
ですが弊社には、設立当初からお餅を扱ってきた実績とノウハウがありますので、お餅にはちょっと自信がありまして。研究を重ね、レトルト加工しても破裂しないお餅の製造に成功しました。
『16種類のプチプチ雑穀ぜんざい』は、御社ならではの高い技術によって可能になった商品なんですね!
実はそうなんです。小豆のあっさりとした甘さと、弊社自慢のもっちりとしたお餅のハーモニーをどうぞお楽しみください。
吉田ふるさと村だから届けることのできる商品を目指して
雲南市吉田町の農家の皆さん
ここまでのお話から、ひとつひとつの商品が原材料や製法にこだわって丁寧に作られていることがよくわかりました。
御社は自治体と地域住民が共同で出資した第三セクターだと伺っています。そのあたりについても教えていただけますか?
「株式会社吉田ふるさと村」は、1985年に島根県雲南市吉田町(旧吉田村)で設立されました。
過疎化が進んでいた旧吉田村の地域振興と雇用の場の創出を目的に、旧吉田村、地元企業さま、そして地元住民の方々の共同出資でつくられた会社です。
雲南市民バスの運行、水道施設管理、観光事業、さらに2019年11月からは温泉宿泊施設「清嵐荘」の管理運営など、農産加工品の製造販売のほかにも幅広く事業を展開しています。
社員6名からスタートし、今では全部門をあわせ社員80数名にまで大きくなりました。
吉田ふるさと村の社員の皆さん
地域住民の方々のインフラに関わるような事業まで展開されているんですね。
そういった意味でも、地域と密接な関わりがある会社だと言えると思います。
毎年秋には弊社が中心となり地域振興を目的としたイベント、「日本たまごかけごはんシンポジウム」を吉田町で開催しています。
新型コロナウイルス流行前は、毎年1000人を超える方々にお越しいただいていました。吉田町の人口が現在1500人ほどなので、その時だけ人口が一気に2倍ちかくに……
すごい規模ですね!
毎年10月に島根県雲南市吉田町で開催される「日本たまごかけごはんシンポジウム」の様子
そうですね。今後もイベントの開催や新商品の開発など、地元の方々やお客さまに喜んでいただける機会を積極的につくっていきたいと考えています。
お話を伺い、御社の商品の背景には、吉田町の地域性や、社員の方々や地元の農家さんの協力、そしてなにより設立当初からブレない「添加物を一切使わず、できるかぎり地元産の農産物を使って安心・安全なものを届けたい」という強い思いがあることがわかりました。
本日はどうもありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
これからも地元産の農産物にこだわる吉田ふるさと村だからこそ作ることのできる商品を目指して、安心・安全でおいしい農産加工品をお届けします!
最後にもう一度、堀江さんからGood Good Martをご利用の皆さんへのメッセージをご覧ください!
吉田ふるさと村の商品